フランスでは高貴な腐敗と呼ばれているこの現象はリースリングやセミヨンなどのブドウにボトリティスシネレアというカビ菌がブドウの皮に付着することによって生まれます。
ボトリティスシネリア菌がブドウに付着すること糸状の菌糸がブドウの皮を破って中に入り込みます。そうすることで、小さな穴が生まれ、そこからブドウの水分が蒸発します。
ミイラ化したカビから胞子が伸びて、一面がカビだらけとなってしまい、捨てるしかないようなブドウに見えますが、それから極上なとろりとした味わいの貴腐ワインができます。
こんなカビだらけのブドウですが、実は果実の中では細菌による様々な反応が起こっており、糖度が高くなる現象が起こります。
ワイン用の貴腐ブドウの栽培は簡単ではありません。
限られた特殊な条件と地域に限定されており、収穫のタイミングに合わせて繁殖させなければなりません。
貴腐ブドウを育てるには夏は晴天が続き、収穫までの間は朝霧が立ち込み、午後は晴れるという厳しい気候条件をクリアしないと造ることができません。
もし、ブドウの生育期に繁殖してしまうと貴腐ワイン用のブドウにはならずに、病気化してしまします。
さらに、黒ブドウに着くと収穫時のタイミングであってもカビによる病気を引き起こします。いわゆる灰色カビ病と呼ばれる病原菌で、農家を非常に悩ませている菌です。
収穫は全て手摘みで選別して行うため、貴腐ワインは高価になります。
世界三大貴腐ワインとは
極甘口ワインはたくさんありますが、貴腐ブドウから造られる貴腐ワインが最高峰です。
ソーテルヌの代名詞であるシャトー・ディケムでは1本のブドウの樹からグラス1杯分しか造らないと言われています。
これらは世界三大貴腐ワインと称されています。
貴腐ワインが生まれた歴史
貴腐ワインの歴史は諸説あり、いつ、どこで始まったのかということは実際に証明できるものはありません。
有力な情報では17世紀、ハンガリーのトカイ地方がまだオスマン帝国の襲来を受けていた頃、ブドウの収穫が遅れてしまい、カビが生えてしまったという説です。捨てるのはもったいないと、収穫の遅れたブドウを醸造してみたところ、非常に甘く美味しいワインが出来上がったといわれています。
同じようにドイツでもブドウの収穫の許可が降りず、許可を待っていたらカビが生えてしまったが、許可が下ったらそのまま収穫して、醸造したところ甘美なワインができたと言われています。
いずれにしろ、偶然に出来上がった甘口ワインが今日の貴腐ワインのようです。
キンキンに冷やして、小ぶりなグラスで楽しみましょう。
4度から6度くらいがおすすめの温度です。
ぷっくりとしたシャンパングラスなど、アオカビのチーズやフォアグラと一緒にマリアージュしたら、本当に天にも登るような気分になってしまいます。